四 殯(もがり)
今まであげた熟語は、私の考へを裏切る筈はないと思ふが、相当に疑はしいものもある。
殯宮・殯斂の殯の字は、もがり[#「もがり」に傍線]或はあらき[#「あらき」に傍線]と訓むことは誤りでないらしい。今日でも、大体語原ははつきりしない。ほなしのあがり[#「ほなしのあがり」は太字]の、火無殯斂を意味するらしい所から、あがり[#「あがり」に傍線]が神あがりなどのあがり[#「あがり」に傍線]と同じであり、もがり[#「もがり」に傍線]は、喪あがり[#「あがり」に傍線]だといふ風に説いて来たが、この説自体やゝ矛盾があり、ほなしのあ[#「あ」は太字]がり[#「ほなしのあ[#「あ」は太字]がり」に傍線]の古語も、ほなしのも[#「も」は太字]がり[#「ほなしのも[#「も」は太字]がり」に傍線]の誤記でないとは言へない。もがり[#「もがり」に傍線]は元、本式に喪葬することでない。ある時期の間、いまだ離れない霊を持つたまゝの屍を、別所に据ゑて置く儀礼である。まだ生人の待遇を捨てないのだから、宮廷では、「大行天皇」と、古くは称してゐた。屍を呼ぶ名であり、霊魂を名ざしての称へである。
もが
前へ
次へ
全61ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング