、自ら別に推測せられさうなものである。
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築《ツ》き立《タ》つ 稚室葛根《ワカムロツナネ》
築き立つる柱は、此|家長《イヘヲサ》の御《ミ》心の鎮りなり。
とり挙ぐる棟梁《ムネウツバリ》は、此家長の御心の賑《ハヤ》しなり。
とりおける椽※[#「木+僚のつくり」、395−1]《タルキ》は、此家長の御心の斉《トヽノホ》りなり。
とりおける蘆※[#「權のつくり」、第4水準2−91−83]《エツリ》は、此家長の御心の平《タヒラ》ぎなり。
とり結《ユ》へる縄葛《ツナネ》は、此家長の御《ミ》命の堅《カタ》めなり。
とり葺ける草葉《カヤ》は、此家長の御富《ミトミ》の剰《アマ》りなり。
 出雲は、新墾《ニヒバ》り。
 新墾りの 十握稲《トツカシネ》の穂を
  浅甕《アサラケ》に醸みし酒《ミキ》を
   美《ウマ》らに飲喫《ヲヤラフ》る哉《カネ》。
         吾子等《ワコタチ》。
あしびきの 此|傍山《カタヤマ》のさ牡鹿の
  角さゝげて わが舞へば、
うまざけ 餌我市《ヱガノイチ》に
 直《アタヒ》もて易《カ》はず――
手掌摎亮《タナソコヤラヽ》 拍上《ウタ》げ給へ。
  
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