伴するものと考へたのが、こゝに言はうとした日本古代信仰の、重要な一つの形態なのである。
かうした形が定つた上は、いつも尊い人を表現するのにも、其人の介添へとなり、其人を育成する者を相並べて考へないでは居られなかつた。即、うしろみ――後見――の習俗が、此から出発した。多くの後見《ウシロミ》は、主人に対して、低い位置にあるものであつた。併し権威は、主人に向つても、振ふことは出来たのである。後代の語で言ふおとな[#「おとな」に傍線]などにも当るが、めのと[#「めのと」に傍線]――女より転じて、男にも言ふことになつた――にも、此定義がある。幼君を養育する者が、成長後は、主人として其人を崇めながら、尚親近感以外に、ある勢力を持つてゐる。さうした者をうしろみ[#「うしろみ」に傍線]と言うた。従つて亦、夫に対して妻をうしろ見と言ひ、妻に対して、夫をうしろ見と言ふこともあるのは、おなじ理由から出てゐる。必、夫なり妻なりが、其相手よりも若くて、年増しの妻なり、年長の夫なりの介添へによつて連れ添うて来たと言ふ間柄の夫婦を言つてゐる。多くは年長《オイ》女房を後見《ウシロミ》と言ふのである。此などは明らかに、
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