あり、保障せられた事になるのである。
これが発達すれば、后・皇子の為のものは、妃嬪・諸王・寵臣の上にも及ぶこと、既記の通りである。宮廷直轄地以外尚、旧領の私有を認められて居たゞらうと思はれる旧来の豪族の土地を除いて、――此については頗る繁雑な問題が拡つてゐる――新しい公認の荘園が出来て来た理由は、茲にあるのだ。
つまり荘園の前型、部曲固有の利権を保護する唯一の証拠として、此等の詞章が、後々役立つ事になつたのだ。此は実際、叙事詞章が呪詞の一体であつたとの、旧信仰の持続せられてゐた所から生じた効果であつた。即、系図の持つ威力と一つであつた。古代において、さうした系図の口頭詞章によるものを、つぎ[#「つぎ」に傍点]と言ひ、宮廷ではひつぎ[#「ひつぎ」に傍線]、他氏ではよつぎ[#「よつぎ」に傍線]と言つた。呪詞・系図・叙事詩の区別が、極めて尠かつたことが考へられるのである。
漂游族の芸能
部落をなしたものは、其によつて、時代的権勢家に併合せられたりすることを免れたが、漂游する部曲民でも亦、此詞章によつて職と、財産とを護ることが出来た。と同時に、ある種の族人だと言ふことは、其を棄
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