つ祝詞と度々称へたのは、さう言ふ処から出たのだ。天つ祝詞は、主上を自家の養ひ君として仕へ奉る時に称へるのが第一義で、其が変化して、食物を献り、酒を薦めて、健康を増進させる為に云ふ古伝の語と云つた意味を第二義としてゐる。即共に、天つ神の寿詞と称してゐる。其外に、幾種類かの寿詞を持つてゐて、此と区別を立てゝ居たに違ひない。唯、学者によつては、対照的に、国つ神の寿詞の存在を説いてゐるけれども、其を信ずべき根拠を見ない。
時にさうした寿詞が、主上の系譜を表す事があつたらしい。つまり、特殊な関係のある臣の家柄と、王氏との系図の交錯を述べた一種の語りごとである。即、此が呪詞類の中の一つの分科をなすものだ。勿論、宮廷にも、かうした口頭伝承の系図のあつた事は信ぜられるが、記・紀・続紀から推測すると、臣下の系譜が宮廷の系譜を整頓する基礎になつた傾きがある様に思はれる。譬へば、出雲人の系譜、又御大葬の際に称へた臣たちの誄詞《シヌビゴト》――これは系譜及び寿詞の様である――から推しても、さうした事が考へられる。つまり、宮廷自身にあつた事が、臣下に移り、臣下に於いて栄えて、更に宮廷に戻ると云ふ、古代信仰の常式
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