うた分も多からうから、此書目の登録する所を以て、所謂見在書の総計だと信じることは、到底出来ない。が、尠くとも、此書に載つた書物に、奈良以前の舶載が極めて多からうと言ふ事だけは、推測する方がほんとうだらうと思ふ。
前漢紀は、後漢の荀悦の著で、建安十年には出来てゐる。悦の序文で見ても、漢書の伝と言ふよりは、漢書をば、其本紀を綱紀として整理したものだ、と言ふ事は出来る様である。従つて巻数も、現在の漢書が百二十巻であるのに対して、三十巻に縮まつて居る。後漢紀は、此書に倣うて出来た物で、巻数はやはり三十巻、東晋の袁宏が、太元元年に撰つたものである。
三史をば為政の準拠として、中央政府に於て尊び、太宰府では、五経あつて三史を蔵せざるを恥ぢた時代である。殊に、三史講筵の行はれた関係から、此二紀が、漢書・東観漢紀或は、後漢紀の、有力な補助として利用せられてゐたらう、と言ふ事も察せられる。大同に到つて、新立の紀伝道に併合せられた進士・秀才の二道は、とりもなほさず科挙の為の学であつて、同時に行政に応用せられるはずの、過去の事蹟を授けるものであつた。貴族の間に流行した私学の建設も、政治社会に於ける、同族の繁
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