言ふ処から見ても、桃太郎以前は神であつた事が知れよう。
桃太郎が成長して、鬼个島を征伐するやうになつてからの名を、百合若大臣だといふのが、其昔、鬼个島であつた、と自認してゐる壱岐の島人の間に伝はる話である。何故、桃太郎が甕からも瓜からも、乃至は卵からも出ないで、桃から出たか。其は恐らく、だん/\語りつたへられてゐる間に、桃から生れた人とするのが一番適当だ、といふ事情に左右せられて、さうなつたものと思はれる。聯想は、無限に伝説を伸すものである。



底本:「折口信夫全集 3」中央公論社
   1995(平成7)年4月10日初版発行
底本の親本:「『古代研究』第一部 民俗学篇第二」大岡山書店
   1930(昭和5)年6月20日
初出:「愛国婦人 第四九一号」
   1923(大正12)年3月
※底本の題名の下に書かれている「大正十二年三月「愛国婦人」第四九一号」はファイル末の「初出」欄に移しました
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年4月8日作成
青空文庫作成ファイル:
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