文学の影響を、極度にとり入れた後世の文学・芸術・芸道が、西行の境地を更に拡げて、細みを、不惑に基礎を据ゑたさび[#「さび」に傍線]に徹せしめたのも無理はない。唯、短歌に於ては、江戸にも明治にも、さび[#「さび」に傍線]に煩はされたものはなかつた。けれども、此歪んだ形の細みを以て、歌の本質と見ねばならぬ様な場合が往々あつた。古今無名氏の歌に還れ、万葉の家持に戻れ、更に、黒人の細みを回復せよ、と言ひたい。
此二つの時代にかけての僧家の歌は、さうした時々の問ひ交しの歌及び、其から導かれた独白の時々に、細みが見られる。其外は概して、驚くほどに騒々しいものばかりである。奈良以来、僧家の歌は、宮廷流行の表現法には遠い古風なものであり、散文律を交へ、また口語脈さへ混じさせてゐる。後の明恵の如きは其著しいものである。讃歌・釈教歌なども、随うて、漢語・漢語音から来る変態律で、国文脈を動揺させてゐる。此等は僧家にもあるが、貴族の人の仏典を讃する歌を作る場合に、殊に其癖を著しく見せてゐる。此は、講式の讃歌の口調を短歌にも移したので、古い物には其癖はわりに尠い。此頃の物には、仏典を和讃する場合は勿論、仏者関係
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