た後進者の、纔《わづ》かづゝの時代的の※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]《アガ》きを見るに過ぎないのである。
後撰集には、其でも古今に対する競争意識が見えてゐる。拾遺集になると、古今を理想とし出した痕があり/\と見える。後拾遺集には、もはや行きづまりが見え出した。唯、宮廷其他の女房生活の頂上とも言へる時代で、男性の文学動機は鈍つて来たのに、散文のみならず、短歌にも自在をふるまふ様になつた。贈答或は恋歌に限られてゐても、其感触は洗煉せられて来てゐる。が其も見渡しての話で、一つ/\の歌に就て言ふと、寂しまずには居られない。和泉式部は、其中ではづぬけてゐる。小町よりも、情熱的にさへ感ぜられる。

     六 短歌改新に与つた人々

曾根好忠は、歌の固定した事を其野性の敏感でとりわけ早く嗅ぎつけた。さうしてその抜け路として、表現法を易《か》へようと試みて、単語や句法の上に苦心をした。其処に印象の鮮やかな、新しげな作物も生れて来た。けれども、真の内容や趣きの発想と言ふ点には心づかなかつた。然し、よい作物になると、無自覚にではあらうが、「細み」が十分に出て来てゐる。短歌の固定する毎に
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