方の きのふの雨に こりにけんかも(巻四)
[#ここで字下げ終わり]
此歌は、いつも雨つゝみをしてゐるあなたは、昨日の雨で外出が出来ずに、懲りた事でせう、といふ意だとされて居るが、実は男、女の禁欲生活をして居る意味の罪である。
猶、此事を考へるのに、手がゝりとなるのは、景行記に見える次の話である。景行天皇が、美濃の国造の祖神、大根王の娘、兄媛・弟媛を、皇子大碓命をして召し上げさせられた時、大碓命は、媛二人を我ものとしてしまひ、他の娘を奉つた。そこで、天子様はお憤りなされて「つねに、長眼《ナガメ》を経《ヘ》しめ、又|婚《メ》しもせず、惚《モノオモ》はしめたまひき」とある。普通には、此ながめ[#「ながめ」に傍線]のめ[#「め」に傍線]は男女相合ふ機会の事を言ふから、其間を長く経る事をば、長目を経るといふのだとしてゐる。だが、此ながめ[#「ながめ」に傍線]は、霖禁に関係がありさうだ。
さて、此ながめ[#「ながめ」に傍線]・ながむ[#「ながむ」に傍線]といふ言葉の意味は、平安朝頃になると、「ぼんやりして何も思はず」といふ位な風になつて居る。もう一つ伊勢物語の例を挙げると、
[#ここから2字下げ
前へ
次へ
全91ページ中77ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング