まつりごと」に傍線]をして居らせられる事になつて居る。だから天孫は、天つ神の命によつて、此土地へ来られ、其御委任の為事をしに来らせられた御方である。
天子様が、すめらみこと[#「すめらみこと」に傍線]としての為事は、此国の田の生《ナ》り物を、お作りになる事であつた。天つ神のまたし[#「またし」に傍線]をお受けして、降臨なされて、田をお作りになり、秋になるとまつり[#「まつり」に傍線]をして、田の成り物を、天つ神のお目にかける。此が食国《ヲスクニ》のまつりごと[#「まつりごと」に傍線]である。
食《ヲ》すといふのは、食《ク》ふの敬語である。今では、食《ヲ》すを食《ク》ふの古語の様に思うて居るが、さうではない。食国《ヲスクニ》とは、召し上りなされる物を作る国、といふ事である。後の、治《ヲサ》める国といふ考へも、此処から出てゐる。食《ヲ》すから治《ヲサ》める、といふ語が出た事は、疑ひのない事である。天照大神と御同胞でいらせられる処の、月読命の治めて居られる国が、夜の食国《ヲスクニ》といふ事になつて居る。此場合は、神の治《ヲサ》める国の中で、夜のものといふ意味で、食すは、前とは異つた意味で用ゐ
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