内国に対する詔書中、大きな事に用ゐられる書式は、最初の書き出しの言葉に、
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明神御大八洲天皇詔旨《アキツミカミトオホヤシマグニシロシメススメラガオホミコト》……咸聞《モロ/\キコシメセトノル》
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といふ詞を、此書式の詔書のはじめに、据ゑねばならぬ。次に、外国即、朝鮮に対しての詔書には、同じく養老令を見ると、大八洲天皇詔旨の代りに、御宇日本天皇詔旨と書いて居る。(「高御座」参照。全集第二巻)
斯くの如く、国内に対しては大八洲天皇といひ、外国には御宇日本天皇といふのである。そして此言葉を唱へられる場合は、初春か、又は、即位式の時である。此点から見ても、即位式と、初春とは同一である、といふ事がわかる。
其意味は、大八洲は皆私のものだ、といふ意味である。そして、御宇日本天皇といふのは、此言葉を受ける人は、皆日本の天子様の人民になつて了ふ、といふ信仰上の言葉である。支那に対しては、言へなかつた。朝鮮にのみ用ゐられた。朝鮮の任那の国をば、内屯倉《ウチミヤケ》とよんで居つた。うちみやけ[#「うちみやけ」に傍線]は、朝廷の御料を収めて置く処といふ意味で
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