、前に言うた相嘗祭と、関聯させて話さねばならぬ。
諸国から稲穂を奉るのは、鎮魂式と関係があるから、此処で話して置く。諸国から稲穂を奉るのは、宮廷並びに、宮廷の神に服従を誓ふ意味なのである。日本では、稲穂は神である。其には、魂がついて居る。国々の魂がついて居る。魂の内容は、富・寿命・健康等である。諸国から米を差し上げるのは、此等の魂を差し上げる事になる故に、絶対服従といふ事になる。米の魂が身に入ると強くなり、寿命が延び、富が増すのである。そして、此魂たる米を差し上げることを、みつぎ[#「みつぎ」に傍線]といふ。たゞつぎ[#「つぎ」に傍線]といふ事もある。
かうして、諸国から差し上げた稲穂を、天子様は、御自分で召食《メシアガ》らぬ先に、上の方《かた》で居られる処の伊勢の大神に奉られる。奉り物は、料理した御飯と、料理せない稲の穂のまゝのを二通り、はざ木[#「はざ木」に傍線]にかけて、差し上げる。此をかけぢから[#「かけぢから」に傍線]といふ。かうして、諸国から到来した米を、天子様が自ら、伊勢の大神に差し上げるのは、祖神に魂を差し上げる事になり、即服従を誓はれる事になるのである。
かうした関係
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