神道の史的価値
折口信夫

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)官《クワン》の

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)百日|旱《ひで》りに

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)そろばん[#「そろばん」に傍線]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)後から/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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長い旅から戻つて顧ると、随分、色んな人に逢うた。殊に為事の係りあひから、神職の方々の助勢を、煩すことが多かつた。中にはまだ、昔懐しい長袖らしい気持ちを革めぬ向きもあつたが、概して、世間の事情に通暁した人々の数の方が、どらかと言へば沢山であつたのには、実際思ひがけぬ驚きをした。此ならば「神職が世事に疎い。頑冥固陋で困る」など言ひたがる教訓嗜きの人々の、やいた世話以上の効果が生じて居る。而も、生じ過ぎて居たのは、案外であつた。社地の杉山の立ち木何本。此価格何百円乃至何千円。そろばん[#「そろばん」に傍線]量りの目をせゝる事を卑しんで、高楊枝で居た手は、新聞の相場表をとりあげる癖がつきかけて
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