見せてゐることを言うて置いた。このはなさくや媛[#「このはなさくや媛」に傍線]も、古事記すさのを[#「すさのを」に傍線]のよつぎを見ると、其を証明するものがある。すさのをの命[#「すさのをの命」に傍線]の子やしまじぬみの神[#「やしまじぬみの神」に傍線]、大山祇神の女「名は、木花知流《コノハナチル》比売」に婚《ア》うたとある。此系統は皆水に関係ある神ばかりである。だから、このはなちるひめ[#「このはなちるひめ」に傍線]も、さくやひめ[#「さくやひめ」に傍線]と殆どおなじ性格の神女で、禊ぎに深い因縁のあることを示してゐるのだと思ふ。

     一四 たな[#「たな」に傍線]と言ふ語

漢風習合以前のたなばたつめ[#「たなばたつめ」に傍線]の輪廓は、此でほゞ書けたと思ふ。だが、七月七日といふ日どりは、星祭りの支配を受けてゐるのである。実は「夏と秋とゆきあひの早稲のほの/″\と」と言うてゐる、季節の交叉点に行うたゆきあひ祭り[#「ゆきあひ祭り」に傍線]であつたらしい。
初春の祭りに、唯一度おとづれたぎりの遠つ神が、屡《しばしば》来臨する様になつた。此は、先住漢民族の茫漠たる道教風の伝承が、
前へ 次へ
全48ページ中44ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング