なども、神女として手づから機織る殿に、おとづれるまれびと[#「まれびと」に傍線]の姿が伝へられてゐる。機を神殿の物として、天を言ふのである。言ひかへれば、処女の機屋に居てはたらくのは、夫なるまれびと[#「まれびと」に傍線]を待つてゐる事を、示す事にもなつて居たのであらう。
[#ここから2字下げ]
天孫又問ひて曰はく、「其秀起《カノホダ》たる浪の穂の上に、八尋殿|起《タ》てゝ、手玉《タダマ》もゆら[#「ゆら」に傍点]に織《ハタ》※[#「糸+壬」、第3水準1−89−92]《オ》る少女《ヲトメ》は、是誰が女子《ムスメ》ぞ。」答へて曰はく、「大山祇[#(ノ)]神の女等、大《エ》は磐長姫と号《ナノ》り、少《オト》は、木華開耶姫と号《ナノ》る。」……(日本紀一書)
[#ここで字下げ終わり]
此は、海岸の斎用水《ユカハ》に棚かけ亘して、神服《カムハタ》織る兄《エ》たなばたつめ[#「たなばたつめ」に傍線]・弟《オト》たなばたつめ[#「たなばたつめ」に傍線]の生活を、稍《やや》細やかに物語つて居る。丹波道主貴の八処女の事を述べた処で、いはなが媛[#「いはなが媛」に傍線]の呪咀は「水の女」としての職能を、
前へ
次へ
全48ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング