して、得意になつて居た位だから、文学的には早く支那化せられて了うた。其から見ると、陰陽道の方式などは、徹底せぬものであつた。だから、何処の七夕祭りを見ても、固有の姿が指摘せられる。
でも、たなばた[#「たなばた」に傍線]が天の川に居るもの、星合ひの夜に奠《オキマツ》るものと信じる様になつたのには、都合のよい事情があつた。驚くばかり多い万葉の七夕歌を見ても、天上の事を述べながら、地上の風物から享ける感じの儘を出してゐるものが多い。此は、想像力が乏しかつたから、とばかりは言へないのである。古代日本人の信仰生活には、時間空間を超越する原理が備つてゐた。呪詞の、太初《ハジメ》に還す威力の信念である。此事は藤原の条にも触れておいた。天香具山は、尠くとも、地上に二个所は考へられてゐた。比沼の真名井は、天上のものと同視したらしく、天《アメ》[#(ノ)]狭田《サダ》・長田は、地上にも移されてゐた。大和の高市は天の高市、近江の野洲川は天の安河と関係あるに違ひない。天の二上は、地上到る処に、二上山を分布(此は逆に天に上したものと見てもよい)した。かうした因明以前の感情の論理は、後世までも時代・地理錯誤の痕
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