言ふ神もあつた。阿波のわなさ・おほそ[#「わなさ・おほそ」に傍線]との関係が思はれる。丹波の宇奈韋《ウナヰ》神が、外宮の神であることを思へば、酒の水即食料としての水の神は、処女の姿と考へられても居たのだ。此がみつは[#「みつは」に傍線]の一面である。
七 禊ぎを助ける神女
出雲の古文献に出たみぬま[#「みぬま」に傍線]は早く忘れられた神名であつた。みつは[#「みつは」に傍線]は、まづ水中から出て、用ゐ試みた水を、あぢすきたかひこの命[#「あぢすきたかひこの命」に傍線]に浴せ申した。其縁で、国造神賀詞奏上に上京の際、先例通り其みつは[#「みつは」に傍線]が出て後、此水を用ゐ始めると言ふ習慣のあつた事を物語るのである。風土記の既に非常に曖昧な処があるのは、古詞をある点まで、直訳し、又異訳して、理会出来ぬ処は其俤を出さうとしたからであらう。其が神賀詞となると、口拍子にのり過ぎて、一層わからなくなつてゐるのである。彼方此方の二个処の古川と言ふのが、川岸と言ふやうになり、植物化して考へられて行つた。尤、神功紀のすら、植物と考へてゐたらしい書きぶりである。其詞章の表現は、やゝ宙ぶらり
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