て来る。
茲にまう一つ言はねばならぬ事は、動詞の終止形を発生させた原動力の問題である。総て、一つの傾向を無意識に感じて、その傾向の下に置かうとする心である。我々の使つてゐる言葉が統一せられて、下二段・上二段・四段・変格と決つて居た訣ではないが、段々整理されて、幾つかの活用形式を生じて来たのである。各動詞の語尾は刈り込まれて、或形式に統一されて来たのである。大体八種の活用に決つてゐるが、音韻変化を頭に置いて考へれば、もつと単純になる。動詞の活用すらも刈り込まれて、統一せられた形に決つて居る。一つの傾向と見るべきは、終止形と連体形が一つに歩み寄るものである。音を刈り込んでなるものである。此を例に見ると、語尾の単純な形と複雑な形となる。四段のものでは訣らぬが、下二段で見ると、終止形と連体形とが分れて複雑になつて居る。其を刈り込んで単純な形に整へて来たものが、四段活用なのである。併し、言葉と言ふものは、さうした所で、他の点から活用を起して行く事情もある。さうして段々活用形式が整うて来るのであるが、古い終止形は連体様の形が多かつた。其を刈り込んだのが何かと言へば、熟語の動詞の中の主部と語根の中、
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