線]は男と女が逢ふことで、其が名詞的の感覚を強める様になつてからは、妻《メ》になつて来る。「ながめを経しめ」は逢ふことの久しい事であるから、夫婦の語らひをばしない、と言ふ意味である。此ながめ[#「ながめ」に傍線]が、ながむ[#「ながむ」に傍線]の語根である。正しいに違ひないが、これまで否定して来たのである。一度名詞の形をとつたものが動詞的に働いて来ると言ふことは、誤りだとして来たのであるが、併しこれは考へに入れる必要がある。ながめ[#「ながめ」に傍線]をふ[#「ふ」に傍線](経)或はへ[#「へ」に傍線]と言ふ観念の引き続きを持つたのである。ながめ[#「ながめ」に傍線]から直ちに活用を起すのでなく、ながめ[#「ながめ」に傍線]をへ[#「へ」に傍線]或はふ[#「ふ」に傍線]といふ形を漠然と意識して居るその中に、ながむ[#「ながむ」に傍線]が出て来るのである。即、形の上でながめる[#「ながめる」に傍線]が融合して出来たのではないが、一聯の心理がある訣である。みたまのふゆ祭り[#「みたまのふゆ祭り」に傍線]からふゆ[#「ふゆ」に傍線]を独立させて来るのと同じ状態である。さうして、動詞の語尾の発
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