歩を遂げた形しかないからだ。唯どうしても、語根のもつと自由に働いた時代を考へる事が、動詞並びに用言の発生に薄あかりを与へることにならうと考へるのである。其には、二通りの道がある。一個の体言が直ちに屈折を起したもの、他の一つは、熟語の形を作つて比較的完全な用言形式を持つやうになつた、即、用言形式を作る為に熟語の形を経て来る、と言ふ此二つである。ふる[#「ふる」に傍線]と言ふ言葉は、何処まで体言で何処まで用言か訣らぬ。この用言風のふる[#「ふる」に傍線]は、同時に体言らしい意義も発揮してゐる。熟語とならなくても、明かに体言の職能を示して居るのである。其が屈折を生ずる。我々の知つてゐる限りの形では、ふら[#「ふら」に傍線]・ふり[#「ふり」に傍線]・ふる[#「ふる」に傍線]即、四段の活用に近い。さうして、ふるゝ[#「ふるゝ」に傍線]・ふるれ[#「ふるれ」に傍線]といふ形は不完全である。体言からすぐに動詞になつて来たものは、過去の或時代に都合のよい形だけ働いて、他は働かなかつたものである。此は沢山ある。ふる[#「ふる」に傍線]でも、連体形以前の形は疑はしいと私は思ふ。
ふゆ[#「ふゆ」に傍線]
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