ん国[#「ゆゐまん国」に傍線]と言ふだけに、よもつへぐひ[#「よもつへぐひ」に傍線]を思ひ起す。異類同火を忌んだゞけでなく、同牲共食で、完全に地下の国の人となつた事を言ふのであらうが、本の国の人に還られぬ理由は、さうした方面からも説く事が出来るのであつた。前章にもあげた六角堂の霊験譚、鬼に著せられた著物の為に隠された身が、法力で其隠形衣の焼けると共に、人間身を表した男の話も、仏典の飜訳とばかりは見られない。
隠れ簑・隠れ笠が舶来種と見られるのも、無理はないが、簑笠は、神に扮する物忌みの衣であることは、日本紀一書のすさのをの命[#「すさのをの命」に傍線]追放の条を以ても知れる。在来種の上に、ぐあひよく外来の肥土を培ふのが、昔の日本人の精神文明輸入の方針であつた。無意識の心の動きは、此に一貫して居る。隠形の衣裳が簑笠になるには、かうした手順を潜つて来て居る。
御伽草子には、多少「蛇子型」の姿を留めたのがあり、微かに、小栗物語の我が国産なるを示してゐる。一寸法師の草子は、異形の申し子を捨てたのが、嫁を得て後、鬼の打出の小槌の力で、並みの人の姿になる様に変形してゐる。「鉢かづき姫の草子」では、
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