」に傍線]と言うた。即、物の実体の形貌をかげ[#「かげ」に傍線]と言うたのである。人の形貌をかげ[#「かげ」に傍線]と言ふのは、魂のかげ[#「かげ」に傍線]なる仮貌の義である。だから、人間の死ぬる場合には、人間の実体なる魂が、かげ[#「かげ」に傍線]なる肉身から根こそぎに脱出するから、其又かげ[#「かげ」に傍線]なる光を発して去るもの、と見るより、魂の光り物[#「光り物」に傍線]を伴ふ場合にあつたりなかつたりする説明は出来ない。だから、たましひ[#「たましひ」に傍線]のひ[#「ひ」に傍点]を火光を意味すると説く事は、第二義に堕ちて居る事が知れる。
姑獲鳥《ウブメ》は、飛行する方面から鳥の様に考へられて来たのであらうが、此をさし物[#「さし物」に傍線]にした三河武士の解釈は、極めて近世風の幽霊に似たものであつた。さう言へば、今昔物語の昔から、乳子を抱かせる産女《ウブメ》は鳥ではなかつた様だ。幽霊の形を餓鬼から独立させた橋渡しは、餓鬼の一種であつた此怪物がしたのであるが、これは、姿を獲たがつて居る子供の魂を預つて居た村境の精霊で、女身と考へられてゐた。
沖縄本島では、同様の怪物を乳之母《チ
前へ
次へ
全25ページ中21ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング