第一章では、肉身を欲する魂魄を以て説いたが、其上にたましひ[#「たましひ」に傍線]の放散した後、本身の魂への魂ふり[#「魂ふり」に傍線]に、頗長い期間を要した蘇生者に対する経験が加はり、又謂はうなら、かげの身[#「かげの身」に傍線]が本身と合体する径路も、根柢に含まれて居ると見られよう。此と蛇子型の民譚とが絡みあへば、小栗の物語の蘇生譚の部分は形づくられる訣である。
たましひ[#「たましひ」に傍線]の語原は訣らないとする方が正直なのだが、魂魄の総名が、たま[#「たま」に傍線]であるのだから、何処までも一つものとは言はれない。厳重な用語例は尠いが、比較に立てゝ言ふと、たま[#「たま」に傍線]は内在のもの、たましひ[#「たましひ」に傍線]はあくがれ出るもの、其外界を見聞することから智慧・才能の根元となるもの、と考へて居たらうと言ふ事だけは、仮説が持ち出せる。さうして其、不随意或は長い逸出などの、本人の為の凶事を意味する游離の場合に限つて、光り[#「光り」に傍線]を放つものと見た様だ。
古代人は光りをかげ[#「かげ」に傍線]と言ひ、光りの伴ふ姿としての陰影の上にも、其語を移してかげ[#「かげ
前へ 次へ
全25ページ中20ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング