#「言あげ」に傍線]を戒める様になつてからは、普通の形でなくなり申し子型に転じて行つたのであらう。
霊物と人間との結婚は、近世では童話に近づいて「猿の臼背負ひ」と言つた形になつて来て居るが、わが国でも古くは、蛇壻の形が多い。近代では、淵の主・山人に拐されて行つた女は、男の国の姿や生活条件を採るものと見られてゐる。此が古代の型になると、生活法の中心だけは、夫の家風に従はなかつた痕が見える。だが此話は、一面神子が人間となり、教主・君主の二方面の力を、邑落の上に持つ様になつた事実の退化した上に、合理化が行はれたものと見ることが出来よう。到る処にある蛇の子孫・狐の子孫などの豪家で、からだの上の特徴を言ふ伝説を伝へながら、獣身解脱を説くことの少いのは、故意に伝承を捨てたとばかりは言へない。
巫女の腹に寓つた神子が神であり、現神――神主――であると言ふ信仰が、日本に段々発達して来てから、人間身の完全不完全を問題とせなくなつたものか。とにかく生れて後、父の国に去つて神の仲間に入つたのもあり、其まゝ人間の母の村に止つたのもあつて、一様にはなつてゐない。が、神子と家系の神との交渉を第一の起点としてゐる家
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