上者にも見られる。而も二魂、各其姿を持つものとの考へから、荒魂の為の身、和魂の為の身に、二様の魂のよるべ[#「よるべ」に傍線]としての御服《ミソ》を作つた。其二様の形体を荒世《アラヨ》・和世《ニゴヨ》――荒魂の身《ヨ》・和魂の身《ヨ》――と言ひ、御服を荒世の御服《ミソ》・和世の御服と称へた。而も荒世・和世の形体の寸尺を計つて、二魂の持つ穢れ・罪を移す竹をも、亦荒世・和世と言うた。二魂の形体の形代としての御服に対して、主上の寸尺を計る竹も、二魂の形体其物の殻と考へられてゐるので、ある時代に、後者が陰陽道の側から、とり込まれた方式なることを示して居るのではないか。此が、夏冬の大祓に続いて行はれる主上の御|贖《アガナ》ひなる節折《ヨヲリ》の式である。東西の文部《フビトベ》が参与することから見ても、固有の法式に、舶来の呪術の入り雑つて居ることは察せられる。
鎮魂祭の儀を見ると、単に主上の魂の游離を防ぐ為、とばかり考へられないことがわかる。年に一度、冬季に寄り来る魂があるのである。御巫《ミカムコ》の「宇気《ウケ》」を桙で衝くのは、魂を呼び出す手段である。いづれ平安朝に入つての替へ唱歌であらうが、
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