的を持つて居た。つまりある信仰の拡まる事は、其国土の伸びる事となるのだ。
天子の奉為《オンタメ》の神人団としては、其|朝《テウ》々に親※[#「目+丑」、95−17]申した舎人《トネリ》たちの大舎人部《オホトネリベ》――詳しく言へば、日置《ヒオキノ》大舎人部、又短く換へて言ふと、日置部|日祀部《ヒマツリベ》など――の宣教する範囲、天神の御指定以外に天子の地となる。皇后の為にも、同様の意義において、私部《キサイツベ》が段々出来て行つた。かうして次第に、此他の大貴族の為に、飛び/\に認可せられた私有地が出来て来る。さう言つた地には、此に其建て主又は、其邑落に信奉せられてゐる呪法の起原の繋る所の叙事詩の主人公――元来の土地所有者の生涯の断片に関して語り伝へたものである。さうして、同一起原を説く土地の間において、歴史的関係が結ばれて来る訳である。
過去の人及び神を中心として、種々の信仰網とも言ふべきものが、全国に敷かれて居たのである。之を行うたのは、誰か。言ふまでもなく、巡游伶人である。而も、其中最その意味の事業を、無意識の間に深く成就して行つたのは、何れの団体であらう。其は、海部の民たちである
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