うとしたのが、かぐら[#「かぐら」に傍線]であり、「言《イ》ひ立《タ》て」によつて、精霊を屈服させようとする事と、精霊が「言ひ立て」をして、服従を誓ふのと、此二つの形を一つにごつた[#「ごつた」に傍点]にして持つものが、「ほかひ」であつたとは言へる。さうして、ほかひ[#「ほかひ」に傍線]の中、所作《フルマヒ》を主としたものが「ことほぎ」であつた。凡、「ほかひ」と謂はれるもの、此部類に入らないものはない。つまり純乎たる命令者もなく、突然な服従と謂つたものもない訣で、両方の要素を持つた精霊の代表者の様な者を、常に考へて居たのである。だから、宮廷、社会の為に、精霊を圧へに来ることは、常世の賓客の様でありながら、実に其地方の地主《ヂシユ》なる神及び、その眷属なる事が多い。私は、神楽・東遊などに条件的に数へられてゐた陪従《ベイジユウ》――加陪従もある――などは、伴神即、眷属の意義だと信じてゐるのだ。此等の地主神――客神《カウジン》・摩陀羅神・羅刹神・伽藍神なども言ふ――は、踏歌|節会《セチヱ》の「ことほぎ」と等しい意味の者で、怪奇な異装をして、笑ふに堪へた口状を陳べる。殊に尾籠《ヲコ》な哄笑を目
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