、あり余つて居た。彼は心弱い人であつた。いつまで引きづられて行つて、あゝした地位に達したものかと思ふ。だから、刺戟はすべて受けこんだ。年とつて後も、若い新古今歌人の影響を、逆に取り入れてゐる。
一体新古今時代の人々は、党派関係以外に、創作鑑賞の上からは、各歌風を認め羨むだけの自由さがあつた。此が、後にも先にもなくなる事実である。院の包容態度から来ても居よう。併し其は、歌の学問化から来たのだ。各派に亘り、諸態に隈ない理会と、製作力がなくてはならぬものとせられた。此久しい傾向が俊成になつて一層おし拡げられた。
文学上にも他力宗のあなた任せ[#「あなた任せ」に傍線]を守つた俊成は、大きな意志を予想した。唯、心|寂《シヅ》かな精進によつて、待つべき神興を考へて居たらしい。彼は、感謝の念を持ち易かつた。彼は、すぐれて印象的な叙景詩にも進んだ。此頃から、歌の大家とある者は、どこか習ひ手と違つた姿を作つて居ねばならぬと言ふ考へを持つた様だ。人々には、叙景の歌なども作らせてゐたが、自分では、今一つ上の位と思はれる処を、行かねばならなかつた。玉葉・風雅の優れた歌風を作つた為兼もが、自身は思ひ入つた形を見
前へ
次へ
全76ページ中52ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング