別殊な動きを感じて、此をとり入れようとしたのは女房風に対する理会があつたからである。女房風は、わが真心の程度まで、相手が心があるかと疑ふ態度で、不満足を予期した様な、悲観気分が満ちて居る。あらかじめ、失恋してかゝつて居るのだ。失恋歌が、女房歌の中心になつて来た。しらべは纏綿、歌口はねつとりであつた。さうして其よりも、もつと離れた位置から、情趣の世界と、気分とを描かうとする態度を感じたのであつた。自分は第三者として即かず離れずに居て、純主観態度から出ぬ味ひのある事を知つたのである。前代以来感傷誇張の小説化の傾向を持つて来た女房歌流の抒情詩は、俊成の努力で著しく変つて行つた。
千載集以後の恋歌の特徴は、中性表現のものである。恋のあはれ[#「恋のあはれ」に傍線]を描きさへすればよいので、自分の実感吐露や、心理解剖は、二の次になつた。贈答用の機智や恋の難題を詠み了せる事の外に、今一つ美しい幻影の存在をば知つたのだ。恋する人の心が、叙事的興味から起る情趣に包まれて、真実よりも優れた美として触れる事を目がけたのだ。しらべ[#「しらべ」に傍線]の裏にはあはれな人生が纏綿して来た。源氏物語風の柔いだ悲
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