つ綴つて來るとか言つて、菜の花桃の花のちら/\する野山を※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つた、風情ある女の年中行事も、今は消え方になつてゐる。
そんなに遠くは行かぬ樣に見えた「山ごもり」「野あそび」にも、一部はやはり、一[#(个)]處に集り、物忌みするばかりでなく、我が里遙かに離れて、短い日數の旅をすると謂ふ意味も含まつて居たのである。かう言ふ「女の旅」の日の、以前はあつたのが、今はもう、極めて微かな遺風になつてしまつたのである。
併し日本の近代の物語の上では、此仄かな記憶がとりあげられて、出來れば明らかにしようと言ふ心が、よほど大きくひろがつて出て來て居る。旅路の女の數々の辛苦の物語が、これである。尋ね求める人に※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りあつても、其とは知らぬあはれな筋立て[#「筋立て」に傍点]を含むことが、此「女の旅」の物語の條件に備つてしまうたやうである。
女が、盲目でなければ、尋ねる人の方がさうであつたり、兩眼すゞやかであつても行きちがひ、尋ねあてゝ居ながら心づかずにゐたりする。何やら我々には想像も出來ぬ理由があつて、日を祀る修道人が、目眩《メクルメ
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