ある。江戸の歌謡類もさうで、殊に、長唄に於いて甚しい。これには、その文の一方をなしてゐる、役者の言葉が省いてあつて、地の文章ばかりだからである。日本には、かうした芸術が行はれてゐるのである。
以上説いた所によつて、大体延喜式祝詞に関する、値打ちの定め方がきまつた訣である。即、延喜式祝詞は、元の姿とは非常に、意味が変つてゐて、祝詞以外のものをも含んでゐるのである。
祝詞には、三種類の内容がある。此祝詞といふ語については、昔からいろ/\の説があるが、私は、かう考へてゐる。即のる[#「のる」に傍線]といふ事は、天皇、或は、国々の君が、神様の資格で、高い処に上つて命令する事である。此のり[#「のり」に傍線]を発する場所を「宣処《ノリト》」と云うた。即、信仰的に設けた、一段高い座なのである。此処で唱へる言葉が、のりとごと[#「のりとごと」に傍線]であつた。其を、次第に略して、のりと[#「のりと」に傍線]といふ様になつた。のりと[#「のりと」に傍線]と言ふだけで、既に其中に、ごと[#「ごと」に傍線]の意が含まれてゐるので、のりとごと[#「のりとごと」に傍線]のごと[#「ごと」に傍線]は、のりと[#
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