皇族の流れ、水の系統は民間からのお方である。どういう皇族が出るかはわからぬ。宮廷の系図ははっきりしすぎていて整理がつかぬが、水の側は整理がつきやすい。ともかく、はっきり見えるのはこの二つである。宮廷自身から出る火のほうばかりが強いわけでもない。交替に出ているわけでもない。
 ところが、水の系統のお方は、どうしても、火の系統のお方に対しては階級が低いのであろう。だから、水の系統のお方が第一位に出られるときには、いろいろと議論が起こった。水の系統の光明皇后が出られたときは、聖武天皇が宣命の中で、わけを説いておられる。だいたい、皇族から出られるのが第一位で、他氏から出られるのは第二位である。火と水との系統の争いは、ずいぶん長くつづいた。しかし、生まれた皇子たちには、区別がないと思うていたらしい。だんだん水の系統から、みめの出ることが盛んになったが、ときどき火の系統からもはいった。
 日本の民間伝承には、宮廷から出たものと、下からのぼったものとがあるが、見やすく誤りのないのは、上から出たもの、すなわち、貴族へ伝わったものである。それを下が模倣している。妻をもつ方法についても、宮廷のことから調べ
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