とばを基礎として、地方人が使い直したものだ。だから、標準語と方言との差は、方言の重要な性質たる、使用される範囲の広さによっては決まらない。標準語は存外使われている範囲は狭く、また、死語が多い。また、東京には行なわれていないが、東京の周囲にあるばかりでなく、九州、東北にまでわたっている語であると、単なる方言ではない。方言、標準語の区別は常識的なもので、学問的な整理はできない。勢力の問題だ。押しの強い人が行なっていれば、行なわれてくる。勢力のある人の使う語、あるいは、ある地方の言語が標準語として出てくる。また、ある職業に限ってはこの語というふうに、勢力の問題である。標準語という固定したものはない。
すると、方言にたいする考えは、もっと自由でなければならぬ。方言の研究の流行は、そろそろ峠に達した。そのことを、春陽堂から出版されている雑誌『方言』が示している。つまり、方言研究の流行は行き止まりだが、方言にたいする注意は深くなってきている。辞書には、方言の記載ということが大切である。辞書では方言を、歴史的、空間的に、特殊な待遇なしに並べていかねばならない。何のために記述したのかと、いちいち論証
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