朔日《ついたち》には、奈良の宮から、勅使が来向われる筈になって居た。当麻氏から出られた大夫人《だいふじん》のお生み申された宮の御代に、あらたまることになったからである。廬堂の中は、前よりは更に狭くなって居た。郎女が、奈良の御館《みたち》からとり寄せた高機《たかはた》を、設《た》てたからである。機織りに長《た》けた女も、一人や二人は、若人の中に居た。此女らの動かして見せる筬《おさ》や梭《ひ》の扱い方を、姫はすぐに会得した。機に上って日ねもす、時には終夜《よもすがら》織って見るけれど、蓮の糸は、すぐに円《つぶ》になったり、断《き》れたりした。其でも、倦《う》まずにさえ織って居れば、何時か織りあがるもの、と信じている様に、脇目からは見えた。
乳母《ちおも》は、人に見せた事のない憂わしげな顔を、此頃よくしている。
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何しろ、唐土《もろこし》でも、天竺《てんじく》から渡った物より手に入らぬ、という藕糸織《はすいとお》りを遊ばそう、と言うのじゃもののう。
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話相手にもしなかった若い者たちに、時々うっかりと、こんな事を、言う様になった。
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