なく、こう言う若人をおきあてた家は、一つのよい見てくれ[#「見てくれ」に傍点]を世間に持つ事になるのだ。一般に、染めや、裁ち縫いが、家々の顔見合わぬ女どうしの競技のように、もてはやされた。摺《す》り染めや、擣《う》ち染めの技術も、女たちの間には、目立たぬ進歩が年々にあったが、浸《ひ》で染めの為の染料が、韓の技工人《てびと》の影響から、途方もなく変化した。紫と謂《い》っても、茜《あかね》と謂っても皆、昔の様な、染め漿《しお》の処置《とりあつかい》はせなくなった。そうして、染め上りも、艶々しく、はでなものになって来た。表向きは、こうした色の禁令が、次第に行きわたって来たけれど、家の女部屋までは、官《かみ》の目も届くはずはなかった。
家庭の主婦が、居まわりの人を促したてて、自身も精励してするような為事は、あて人の家では、刀自等の受け持ちであった。若人たちも、田畠に出ぬと言うばかりで、家の中での為事は、まだ見参《まいりまみえ》をせずにいた田舎暮しの時分と、大差はなかった。とりわけ違うのは、其家々の神々に仕えると言う、誇りはあるが、小むつかしい事がつけ加えられて居る位のことである。外出には、下人
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