冷気――。
郎女は目を瞑《つぶ》った。だが――瞬間|睫《まつげ》の間から映った細い白い指、まるで骨のような――帷帳を掴《つか》んだ片手の白く光る指。
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なも 阿弥陀《あみだ》ほとけ。あなたふと 阿弥陀ほとけ。
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何の反省もなく、唇を洩《も》れた詞。この時、姫の心は、急に寛《くつろ》ぎを感じた。さっと――汗。全身に流れる冷さを覚えた。畏い感情を持ったことのないあて人の姫は、直《すぐ》に動顛《どうてん》した心を、とり直すことが出来た。
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のうのう。あみだほとけ……。
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今一度口に出して見た。おとといまで、手写しとおした、称讃浄土経の文《もん》が胸に浮ぶ。郎女は、昨日までは一度も、寺道場を覗いたこともなかった。父君は家の内に道場を構えて居たが、簾《すだれ》越しにも聴聞は許されなかった。御経《おんきょう》の文《もん》は手写しても、固《もと》より意趣は、よく訣《わか》らなかった。だが、処々には、かつがつ気持ちの汲みとれる所があったのであろう。さすがに、まさかこんな時、突嗟《とっさ》に口に上ろう、とは思うて
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