そほかの氏[#(ノ)]上よりも、此方《こちら》の氏[#(ノ)]助ははたらいてゐるのだが、だから、自分で、氏[#(ノ)]上の気持ちになつたりする。――もう一層なつてしまふか。お身はどう思ふ。答へる訣にも行くまい。氏[#(ノ)]上に押し直らうとしたところで、今の身の考へ一つを抂げさせるものはない。上様方に於かせられて、お叱りのお語を下しおかれない限りは……。
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京中で、此恵美屋敷ほど庭を嗜《この》んだ家はないと言ふ。門は左京二条三坊に、北に向つて開いて居るが、主人家族の住ひは南を広く空《あ》けて広々とした山斎《やま》が作つてある。其に入りこみの多い池を周らし、池の中の島も、飛鳥[#(ノ)]宮風に造られた。東の中《なか》み門《かど》、西の中《なか》み門《かど》が備つて居る。どうかすると、庭と言ふより寛々《くわん/\》とした空き地の広くおありになる宮廷よりは、もつと手入れが届いて居さうな気がする。
庭を立派にしたうま[#「うま」に傍点]人たちの末々の事が、兵部大輔の胸に来た。瞬間憂鬱な気持ちがかゝつて来て、前にゐる紫微内相の顔を見るのが気の毒な様に思はれた。
[#ここか
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