最低の古典
――新かなづかひと漢字制限――
折口信夫
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現代かなづかひがきまつたのはともかくめでたいことと思ふ。ただ、それについて大きな用意があるのかといふことだけをききたい。歴史かなづかひといふものは、われわれ国民、年寄りから低いところは国民学校の子供に至るまで、これを以てほこりとしてゐる最低の古典なのだから、これに代るべきものが用意せられてゐるか、或は何か与へなければならぬといふことを考へたかどうか問ひたい。
新かなづかひが出来たから、それでおしまひといふのでは、国語のまつりごとはからつぽになる。国民はみな国語を愛してゐる。役人も、もちろん国語を愛してゐることにおいては、誰にも負けるものではない。それは信じてゐる。しかしその愛を一人占めするやうな気持があつては困る。かういふ際はできるだけへりくだつた気持でことをさばいてほしいものだ。要するに、国語表現の歴史がいつぺん
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