居る。
万葉人の時代には以前共に携へて移動して来た同民族の落ちこぼれとして、途中の島々に定住した南島の人々を、既に異郷人と考へ出して居た。其南島定住者の後なる沖縄諸島の人々の間の、現在亡びかけて居る民間伝承によつて、我万葉人或は其以前の生活を窺ふ事の出来るのは、実際もつけの幸とも言ふべき、日本の学者にのみ与へられた恩賚である。沖縄人は、百中の九十九までは支那人の末ではない。我々の祖先と手を分つ様になつた頃の姿を、今に多く伝へて居る。万葉人が現に生きて、琉球諸島の上に、万葉生活を、大正の今日、我々の前に再現してくれて居る訣なのだ。

     二 君主――巫女

大化の改新の一つの大きな目的は、政教分離にあつた。さう言ふよりは、教権を奪ふ事が、政権をもとりあげる事になると言ふ処に目をつけたのが、此計画者の識見のすぐれて居た事を見せて居る。
村の大きなもの、郡の広さで国と称した地方豪族の根拠地が、数へきれない程あつた。国と言ふと、国郡制定以後の国と紛れ易い故、今此を村と言うて置かう。村々の君主は、次第に強い村の君主に従へられて行き、村々は大きな村の下に併合せられて行つて、大きな村の称する国
前へ 次へ
全21ページ中3ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング