]である。
殊舞(たつゝまひ)は起ちつ居つして舞ふからの名だ、と言ふ事になつて居るが、王朝以後|屡《しばしば》民間に行はれた「侏儒舞《ヒキウドマヒ》」の古いものを、字格を書き違へて伝へ、たつゝ[#「たつゝ」に傍線]なる古語を名として居た為に、訣らなくなつたのであらう。此舞を舞うたのは弘計[#(ノ)]王で、度々言うて来た縮見《シヾミ》の室ほぎ[#「室ほぎ」に傍線]の時であつたのも、家の精霊を小人と考へて居た平安朝頃の観念を、溯らして見る事が出来れば、説明はうまくつく。
鳥名子《トナゴ》舞は、伊勢神宮で久しい伝統を称してゐるものである。普通ひよ/\舞[#「ひよ/\舞」に傍線]と言うた上に、鶏の雛の姿を模する舞だと言ふから、やはりあの跛の走る様なからだつき[#「からだつき」に傍線]の身ぶりなのだ。
鹿や蟹のをこ[#「をこ」に傍点]めいた動作をまねる人か人形かの身ぶりが、寿詞系統のほかひゞと[#「ほかひゞと」に傍線]の謡について居なかつたとは言はれないのである。

     四 ほかひゞと[#「ほかひゞと」に傍線]の遺物

ほかひゞと[#「ほかひゞと」に傍線]の後世に残したものは、由緒ある名称
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