つた新しいつぎ[#「つぎ」に傍線]を語り伝へさせるのが目的であつた。軽部《カルベ》は木梨[#(ノ)]軽[#(ノ)]太子の為に、葛城部《カツラギベ》は磐[#(ノ)]媛皇后の為に、建部《タケルベ》は倭建命の為に、春日部は春日皇后の為に立てられた名代・子代であつた。皆、美しく、苦しき、猛く、弛《ユル》さぬ、あはれな物語を伝承して居た。
子のない為に作つたのが、名代の原義ではなかつた。だから、其人に子孫のある時は、其地を私用して、一種の村君の生活をした。
つぎ[#「つぎ」に傍線]の第一義的効果は、死霊退散にあつたのだから、後|漸《やうや》く、つぎ[#「つぎ」に傍線]自身呪文の様な威力を持つて来た。即、君主・族長の人格的現実観が、其神格に対する畏敬をのり超えて了ふやうになると、其信仰威力を戻す為に、実証手段として、つぎ[#「つぎ」に傍線]の諷誦が行はれる。最正しい伝統によつて神格を享けてゐる人ゆゑ、其稜威は精霊・魂魄の上に抑圧の威力を発揮する。かうした畏怖を相手方に起させるものと信じた。其が更に、つぎ[#「つぎ」に傍線]を唱へるだけで、呪力が発動するものとの信仰を生んだ。
戦争も求婚も、元は一つ
前へ
次へ
全137ページ中80ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
折口 信夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング