尊者としてあへしらはれた。
此通りまれびと[#「まれびと」に傍線]は、必しも昔の樣に、常世の國から來ると考へられた者ばかりではなくなつた。幾種類ものまれびと[#「まれびと」に傍線]があり、又、神話化し、過去のことになつたのもあると共に、知らず識らずの間に、やつした神の姿を忘れて、唯の人としてのまれびと[#「まれびと」に傍線]が出來た。又、衣帶《エタイ》の知れぬ遠處新來の神をも、まれびと[#「まれびと」に傍線]に對して懷いた考へ方に容れる事になつた。一つは、新神の新にして、萎えくたびれない威力を信じ畏れた爲もある。が併し、如何なる邪神にでも、鄭重なあるじぶり[#「あるじぶり」に傍線]と、纒綿たるなごり惜しみの情を表出して、他處へ送る風の、今も行はれて居つて、其が盂蘭盆の聖靈送りなどに似て居るのを見れば、自ら納得の行くことがあらう。其は遠來神・新渡神に對するのと、精靈に對するのとは、形の上に區別がないことである。即、常世の國から毎年新しく、稀におとづれ來る神にした通りの禮式を、色々な意味のまれびと[#「まれびと」に傍線]に及したのである。決して單純に、邪神に媚び事へて、我が村に事なからしめ
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