占ふのである。
此一轉化したものが、粥占である。旅行者の身の上を案ずる場合にも、此方法で問うた樣である。病氣には、其酒をくしのかみ[#「くしのかみ」に傍線]として飮ませ、旅行者無事に歸つた時は此を酌んで賀した。さうした酒宴を酒ほかひ[#「酒ほかひ」に傍線]と言ふのだと考へる人もある樣であるが、釀酒の初めに行はれる式を言ふ事は疑はれぬ。此式は占ひの方に傾いた爲に、後には神の意志は、象徴として表され、本體は來臨せぬものゝ樣に見えるが、
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このみ酒《キ》は、わがみ酒《キ》ならず。酒《クシ》の神、常世にいます、石《イハ》立たす少名御神の、神壽《カムホ》ぎ壽《ホ》ぎ狂ほし、豐壽《トヨホ》ぎ壽ぎ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《モトホ》し、獻《マツ》り來しみ酒《キ》ぞ。涸《アサ》ず飮《ヲ》せ。ささ(仲哀記)
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など言ふところから見ると、常世の神が來て、ほかひ[#「ほかひ」に傍線]するものと信じ、其樣子を學んで、若者が刀を振り※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]し、又は或種の神人が酒甕の※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りを踊りま
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