から來る靈物との間に違ふ點は、形態の差異だけしかない訣であるが、にいる人[#「にいる人」に傍線]の方が、村の生活・村の運命との交渉が緻密である樣に見える。此巨人も、擇ばれた若者たちが、一體につき二人づゝ交替に這入ることになつて居る。其を男たちは知つて居て、而も敬虔感は失はないのである。
にいるすく[#「にいるすく」に傍線]は、海底か洋上か、其所在、頗、曖昧であるが、此は後に説くとして、先島の人々は、にいるすく[#「にいるすく」に傍線]を恐しい處と考へて居ることは、事實である。暴風もにいるすく[#「にいるすく」に傍線]から吹くと考へて居る。此は洞窟を以て、風伯の居る所とし、其海岸にあるものは、黄泉への通路として居る世界的信仰と脈絡があるのである。風とにいる[#「にいる」に傍線]との關係に就ては、沖繩本島でも、風|凪《ナ》ぎを祈るのに、にらいかない[#「にらいかない」に傍線]へ去れと唱へるので訣る。にいる[#「にいる」に傍線]を風の本據と見て居る證である。
にらいかない[#「にらいかない」に傍線]は、言ふまでもなく、にいる[#「にいる」に傍線]と同じ語で、かない[#「かない」に傍線]は對句
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