外《ト》に立てめやも
誰《タレ》ぞ。此家の戸《ト》押《オソ》ふる。にふなみ[#「にふなみ」に傍線]に、我が夫《セ》を行《ヤ》りて、齋《イハ》ふ此戸を
[#ここで字下げ終わり]
此二首の東歌(萬葉集卷十四)は、東國の「刈り上げ祭り」の夜の樣を傳へてゐるのである。にへ[#「にへ」に傍線]は神及び神なる人の天子の食物の總稱なる「贄《ニヘ》」と一つ語であつて、刈り上げの穀物を供《クウ》ずる所作をこめて表す方に分化してゐる。此行事に關した物忌みが、にへのいみ[#「にへのいみ」に傍線]、即にふなみ[#「にふなみ」に傍線]・にひなめ[#「にひなめ」に傍線]と稱せられて、新甞と言ふ民間語原説を古くから持つて居る。此宛て字を信じるとすれば、なめ[#「なめ」に傍線]といふ語の含蓄は、極めて深いものとせなければならぬ。
大甞《オホムベ》は大新甞、相甞《アヒムベ》は相新甞で、なめ[#「なめ」に傍線]が獨立して居ないことは、おほなめ[#「おほなめ」に傍線]・あひなめ[#「あひなめ」に傍線]と正確に發音した文獻のないことからも知れる。鳥取地方には、今も「刈り上げ祝ひ」の若衆の宴をにへ[#「にへ」に傍線]と稱へて居
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