思はれる一つの樣式として、語部《カタリベ》と言ふ職業團體――かきべ――が、段々成立して行つた。
神|憑《ガヽ》りの時々語られた神語の、種族生活に印象の深いものを語り傳へて居る中に、其傳誦の職が、巫覡の間に分化して來た。さうして世襲職として、奉仕には漸く遠ざかり、詞句の諳誦と曲節の熟練との上に、其が深くなつて行つたものと思はれる。
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語部の話は、私の研究の筋を辿つて、雜誌「思想」(大正十三年一月)に公にせられた横山重氏の論文がある。私の持つて居る考へ方は、緻密に傳へられて居る。それを推擧して、私は唯概念を綴る。
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        二

神語即託宣は、人語を以てせられる場合もあるが、任意の神託を待たずに、答へを要望する場合に、神の意思は多く、譬喩或は象徴風に現はれる。そこで「神語」を聞き知る審神者――さには――と言ふ者が出來るのである。
中には人間の問ひに對して、一言を以て答へる、一言主《ヒトコトヌシ》[#(ノ)]神の樣に方法を採るのもあつた。
神の意思表現に用ゐられた簡單な「神語」の樣式が、神に對しての設問にも、利用せられる樣になつたかと思
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