たのですから恐しいですが、だけども、それだけの事実を知つてみると言ふと、この歌はもとは伊勢物語の伝への通りのものではない、と言ふ事が訣る。唯、さう言ふ風に自然に解釈して行くと、解釈が如何にもうまく出来てをります。かう言ふ事はこの歌だけではない。伊勢物語は、殆ど、かう言ふものばかりなのです。全部とは言へないけれども、大和物語もさうです。その他の物語類にも、あちらこちらに散らばつてをります。ですから、文章の解釈と言ふものも、次第々々に行はれて、だん/\合理化せられて行く訣です。ですから、又申上げる話がもとに返りますけれども、祝詞なんかだん/\変つて行くことは不思議のない事です。

     六 国語の階級的伝承と地方的伝承と

謎の問題が残りましたが、謎の問題に関聯して又色々な話がございますが、それより、せめて国語を伝承する階級として、階級的の事実を挙げて行きたいと思ひます。
女房が伝承したとか、貴族が伝承したとか言ふ事の一箇条にでも、触れたいと思ひますので申上げますが、譬へば、女房の間の伝承の言葉と言ふものを見ようとすれば、物語や日記類を見れば大体訣りますけれども、もつと端的な事実があり
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