る寿詞を奏した面影は、あの新羅王の誓詞をもつても明らかである。勿論、あれは、日本語風に表現せられた寿詞を、更に、記録者が異訳した跡が見えるのである。
さて最後に、さうした祝詞は、何時・何処で宣下されたものか。私は、其宣下の座を、古くのりと[#「のりと」に傍線]と称したものと観てゐる――そこで宣り給ふ詞章なるが故に、のりとごと[#「のりとごと」に傍線]、と言うたのである――其を略して、単にのりと[#「のりと」に傍線]と云ひふるして来た為に、のりとごと[#「のりとごと」に傍線]を以て、重言のやうに考へ、或は、のりと[#「のりと」に傍線]を分解して、のりときごと[#「のりときごと」に傍線]・のりたべごと[#「のりたべごと」に傍線]或はのりごと[#「のりごと」に傍線]と言うた風に、と[#「と」に傍線]にこと[#「こと」に傍線]の意味を想定する学者ばかりが出来たのである。
高御座を以て、私は、のりと[#「のりと」に傍線]、即、誕生――復活の詔旨を宣下し給ふ座と考へる処まで来た。
私の此話は、日本の古代の暦法、天上天下の関係を説かねばならなくなつた。此は他日の機会を俟ちたい。たゞ、最後に、言ひ添へ
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