は、浮島なる処にとし、又その一書には浮島なる平にとなつてゐる。そんな変なことは無い筈だが、口頭伝承は、このやうに、まち/\に伝つてゐるのである。日本の古書には、古い程、又神聖な程、かうしたものが多い。大切だと思ふ処は、一生懸命に守つてゐるが、其処に意志を加へないから、益、変化してしまふ。
あまつゝみ[#「あまつゝみ」に傍線]、くにつゝみ[#「くにつゝみ」に傍線]といふ言葉がある。此については、既に書いた事もあるが、あまつゝみ[#「あまつゝみ」に傍線]は、くにつゝみ[#「くにつゝみ」に傍線]に対してゐるとされてゐるが、さうではなさ相である。すさのを[#「すさのを」に傍線]の命が、天上で犯した罪の償ひに、其時期になると、天上のことを地上にうつして、我々がせねばならぬ慎しみ、即日の神、日の神の作物に対する物忌みが、あまつゝみ[#「あまつゝみ」に傍線]である。くにつゝみ[#「くにつゝみ」に傍線]は、更に不思議であるが、此は、我々の考へてゐる程、古いものではないらしい。つまり、つみ[#「つみ」に傍線]の意味には、穢れ・物忌みに於ける、又神が欲しいと思ふと、神にあげる為の、慎しみをいふ意味もある。
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